福岡地方裁判所 昭和46年(わ)111号 判決 1971年10月15日
本籍
北九州市小倉区大字今村三一四番地
住居
右同
会社役員
谷崎素
大正一四年八月二五日生
所得税法二三八条一項(いずれも懲役および罰金を併科する)、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(第一の懲役刑に法定の加重をする)、四八条二項、一八条、二五条一項、刑事訴訟法一八一条一項本文
主文
被告人を懲役四月および罰金一五〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金一万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
(罪となるべき事実の要旨)
別紙のとおり。
裁判所書記官 亀永康夫
(裁判官 吉田修)
別紙
被告人は、昭和四〇年ころから谷崎産業という名称で宅地の造成、分譲業を始め、北九州市小倉区大字今村等において「昭和第一団地」および「昭和第二団地」を、同区大字小熊野において「昭和第三団地」を、同区大字篠崎において「篠崎団地」をそれぞれ造成のうえ分譲を行なつていたものであるが、不正の方法により所得税を免れようと企て、
第一、昭和四二年度分の実際の所得金額が一四、〇四万八、三五九円で、これに対する所得税額が、五、九四万八、七〇〇円であつたにもかかわらず、右宅地を分譲するに当り、その売買代金額につき実際の代金額より小額の金額を記載した内容虚偽の売買契約書を作成してその差額を売上から落し、あるいは実際は自己の取引であるのに、他人の取引であるかのように他人名義を詐称し売上から除外した金を仮名で銀行に預金するなどの不正な方法を用いてその所得を秘匿したうえ、昭和四三年三月一二日所轄小倉税務署において、同税務署長に対し、被告人名義で、右年度の所得金額が二、五八万八一六円で、これに対する所得税額が四一万四、〇〇〇円である旨の、更に友人江口久孝の名義を用いて、前記「昭和第二団地」の造成、分譲による所得の一部が右江口の所得であるかのように仮装し、その所得金額が九四万二、五〇一円で、これに対する所得税額が一三万一、七〇〇円である旨の内容虚偽の各所得税確定申告書を提出し、もつて右年度の正規の所得税額と右各申告額との差額五四〇万三、〇〇〇円をほ脱し
第二、昭和四三年度分の実際の所得金額が九五七万六、八八四円でこれに対する所得税額が三、四八万九、三〇〇円であつたのにもかかわらず、前同様の不正な方法を用いて、その所得を秘匿したうえ、昭和四四年三月一五日前記小倉税務署において、同税務署長に対し、被告人名義で、右年度の所得金額が二七六万六、〇一二円で、これに対する所得税額が四三万八、〇〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて右年度の正規の所得税額と右申告額との差額三〇五万一、三〇〇円をほ脱し
たものである。